散歩道<2265>
経済気象台(299)・市場主義と経営
宇沢弘文氏は、資本主義経済においても、共同体の文化や価値観に深く結びついた「社会的共通資本」のありようの大切さを強調し、市場経済のパーフォーマンスもその土台の良否に左右されるといってきた。その宇沢氏が今、日本の医療崩壊に強い懸念を示している。ある医療機関誌に寄稿された内容は、保険財政を立て直すための市場原理主義の徹底という政策によって,医師看護師の疲弊が深まり、また患者からの告訴の多発など、医療者への信頼と医療者の献身という「信と応え」の関係も対立的な構造に変化した。先進諸国に比べてかなり低水準の報酬にもかかわらず、献身的な使命感で保たれていた日本の高い医療水準は低下しつつあり、その流れはこの4月から始まる「後期高齢者医療制度」によって決定的になるという。市場原理主義の過剰な徹底、そして患者との「信と応え」の衰弱が医療者の「燃え尽き」を生み出し、医療保険という社会的共通資本を壊している、との指摘には多くの示唆が含まれている。市場原理の貫徹は当然と受け止める企業経営においても、その徹底の副作用として何か大切なものが失われつつあるという実感があるからだ。それは企業が人間の集団である「共同体」としてもっている側面、たとえば社員にとって社会に役立っていると思える働きがいや、はみ出してでも助けようとする連帯感、互いの願いを大切に受け止め個性を生かし合う思いやり、他の痛みに応えよとする共感力などである。それは企業がこれから未到のフロントを切り開くためには特に重要となる「場」の力である。それはまた、仕事と人生をつないで活力を良循環させる環(わ)でもある。市場原理主義の徹底による副作用を抑えつつ、こうした場の力をどう高めるか。それは一層厳しくなる環境を生き抜く経営にとって大切な課題だと思われる。
'08.3.6.朝日新聞
備考:散歩道<121>相田みつをさんの”うばいあえば足りぬ、わけあえばあまる”という考えを持つことが必要だと思います、社会は皆の協力によって維持されているのです。自分の権利だけを主張ことでは、社会全体が保てないと思います。
備考:散歩道<178>西洋には、甘えという言葉はない、だから甘えないんだ。というように、一人で頑張って強く生きていくことが基本だと思います。介護制度も昔はなかったのです、人は一旦制度が出来上がり、一旦権利を獲得するとそれが当たり前のことと自分のことを強く主張しがちだと思います。それでは社会は保てません。(言い難いことを敢えて発言します)2008年3月22日