散歩道<2247>

                             経済気象台(290)・企業評価の尺度

 年頭の株価は600円超の大幅下落で、かねて海外投資家が日本株に失望したと伝えられれいることも想起される。だからと言って萎縮する必要もあるまい。その評価の尺度は、目前の利益を上げやすいかどうか、資本としての増殖を最優先する尺度に過ぎないからである。中・長期的にみれば、企業価値の決め手は企業が奉仕対象である顧客の必要や痛みにどれほど誠実に応えられる力をもっているかにかかる。しかし、今では株主たちの関心はそうした企業の実体づくりへの参加というよりも、結果としての利益参加に大きくシフトしている。経営者の志や人間的資質、また社内の信頼関係や人の育みの風土など、企業活動を支える「人間」という大切な要素が持つ可能性を発掘し、育むことには関心が薄い。そうした株主たちの利害を最優先する評価の尺度に一喜一憂するならば、会社における人間自体の位置づけは経営者も社員も利益獲得のための手段としかみえなくなる。企業価値を支える人間の成長が生む力を軽んじ、資本の増殖だけを重視する経済や経営の発想は程なく壁に突き当たる。それは企業とは何かの問い直しを促し、仕事を通しての人間としての深化や成長、また、その個性の協同によって人々の必要に応える「場」としての力を高めることを大切にするパラダイムへの変化につながろう。その目で見れば、世界でも飛び切りのエクセレントカンパニーや日本でとりわけパフォーマンスを高めた企業にはそうした下地があることに気づく。この大きな変革への兆候は既にある。サブプライムローン問題*1の深刻さ、またそれをカバーするために、中東などの政府系ファンドが前面に出てきたことによる中長期的な投資尺度の回復もその一つである。日本の企業も改めて「人間の可能性を信じる」長所を生かした立て直しを図る必要があろう。

'08.1.9.朝日新聞

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