散歩道<2208>

                              経済気象台(277)・通過点か転換点か

 2月27日の中国株急落をきっかけに、世界中の株価が下落し、円ドル・レートも上昇した。その後も、市場の不安定な動きは続いている。多くのエコノミストは、これまでの株価上昇は好調な世界経済を反映したもので、調整は一時的だろうといっている。つまり、今回の株価調整は上昇トレンドにおける通過点の一つに過ぎないというわけだ。しかし、株価上昇を支えてきたのは経済だけではない。日本の超低金利などを背景にグローバルなカネ余り(過剰流動性)が生じ、投資家がリスク資産に潤沢な資金をつぎ込んできたことが、株価を押し上げてきた。経済や株価が上昇を続けたこと、デリバティブズや証券化など金融技術革新がリスクの所在を分りずらいものにしたことが、投資家のスタンスを積極化させたという面もあった。つまりこれまでの株価は、金融相場という性格を強く持っていた。しかし今、世界の金融市場では過剰流動性が縮小しようとしている。日銀は異常な低金利の是正を目指して、金利を引き上げた。中国は、過剰投資やバブルを抑制するために、金融を引きしめている。欧州や他のアジア諸国でも、金利引き上げが続いている。そしてアメリカでは、インフレ懸念の残存、および生産性上昇率の鈍化に伴うインフレ吸収余力の低下から、金利を維持せざるを得ない状態が続いている。それは、株価を支えてきた金融面の条件が失われつつあるということである。加えて、日米両国では景気減速の兆しも見え始めた。日本では個人消費が伸び悩み、アメリカでは住宅市場の縮小が止まらない。このように考えると、今回の株価下落は、上昇トレンドにおける一時的な調整ではなく、構造変化に基ずく不可逆的な水準是正だったのではないか。やがて2月27日が世界の株式市場や経済の転換点だったと気付くことになるだろう。

'07.3.10.朝日新聞