散歩道<1967>
経済気象台(225)・民の声は聞こえた
いざなぎを超えて戦後最長の景気拡大とか、いってくれるな。あの頃は給与がどんどん上ったが、今は全然上らない。「完全な二極化だ。景気がよいのは都市の大企業だけ。我々、地方の中小企業は景気のよいという感じは全くない」「自分に合った仕事*1を見つけろ、などと教育するから、自分の子供も自分の会社の若い社員もすぐやめてしまう。仕事が自分に合っているかどうかは、20年、30年働いてはじめてわかることではないか」。大学の教職員と学生の保護者の懇談会でのこと。こちらは、バブル期なみの求人となり、学生の就職状況もすっかり明るくなって、親御さんたちもさぞご安心でしょう、と月並みの話題を切り出すつもりだった。だが、父母からは口々に政府の認識不足を訴える声が上った。景気判断、経済政策、教育政策などすべての点で、政府の言うことは国民の生活実感に合わないという。楽観論を口にした私としては、経済成長の実感がなく、所得分配の格差拡大を意識している人々がいかに多いか痛感させられ、いずまいを正させられた。極め付きはこれだった。「今度の参議院選挙はいい時にやりますな。私の思うとおりに投票しますよ」「成長を実感に」の安倍首相率いる自民党が大敗し、「国民の生活が第一」の小沢代表が率いる民主党が大勝したことは驚きだった。だが、振り返ってみれば、大学の教員と父母の話し合いですら、政治に訴える民の声は聞こえた。国民に日々接する政治家は、耳が痛くなるほど聞こえたに違いない。とすれば、民の声を押し切ろうとした安倍首相は、全く分かっていないことになる。民の声に応えようとした小沢代表は、政策がつめられるかどうか問われる。どちらにしても責任は重大だ。
'07.8.23.朝日新聞
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