散歩道<1852>
経済気象台(183)・「仕組み」の経済学−1
顕著な破綻
社会が複雑になるにつれ、会社や組合に代表される組織や取引の場としての市場が発達する。そのような私的取引の公平性や違法性排除を担保するために、法規制や行政が必要となる。つまり、社会の様々な「仕組み」が登場するので、それらの「仕組み」の有効性や機能性が問題になる。資本主義の仕組みでは時に「市場の失敗」といわれる問題が生じるので、政府の介入が正当化されている。ケインズ革命以来、官の民間介入が増大したが、我が国の場合は戦後に社会主義的政策を推し進めた結果、官の肥大化が著しく進んだ。その間、政府の産業政策が失敗ばかりであったことは、マイケル・ホーター他の「日本の競争戦略」でも明らかにされている、バブル崩壊以降の日本経済の変質に、経済の仕組みは遅々として対応できてない。法が本来の目的に合わず意図した効果が実現しない、あるいは時代の変化に合致しなくなれば、速やかに改廃してしかるべきものだ。法規制以上に問題なのが我が国の行政システムといえ、「政府の失敗」が深刻である。この数ヶ月でも、経済の仕組みの破綻例にあふれている。例えば、日替わりメニューのように不祥事が暴かれる社会保険庁を筆頭に、仲間内で官製談合を繰り返していた緑資源機構、続出する冤罪(えん)や情報漏洩(ろうえい)に加えて談合仲介者までだした警察、介護不正をチェックできなかった厚生労働省、詐欺商法の抵当証券会社の脅しに屈した金融庁、エレベーター事故やジェットコースター脱線事故で急きょ緊急点検を始めた国土交通省、スパ爆発で泥縄式に安全対策ガイドラインを作る東京都、等々。経済学はインセンティブの学問といわれるが、わが国の場合は従来の「仕組み」の不具合が顕著になったり、破綻したりしているため、「仕組み」の経済学が必要になっている。
'07.6.28.朝日新聞
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