散歩道<1706>
社説21提言・日本の新戦略(17)-3・9条の歴史的意義・日本社会がつくりあげた資産 (1)〜(3)続く
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第四に、国民に「非軍事」の持つ潜在力を考えさせる視点を提供した。20世紀までの国際社会では、軍事力の持つパワーは圧倒的だった。しかし21世紀に入るあたりから、そのパワーに、はっきりと陰りが見え始めた。9・11同時テロを思い起こして欲しい。カッターナイフだけを持った少数の実行犯がジェット機を乗っ取り、あれほどの大事件を引き起こした。国と国との争いに重点を置いた、伝統的な軍事力の考えでは対応できない事態だ。今米国の強大な軍事力をもってしてもイラクを治められない現実が、なによりもその限界を象徴している。テロや大量破壊兵器の拡散、感染症、地球環境問題などのように、軍事力では手に負えない課題が増えている。では、どうすればいいのか。軍事力の出番がなくなったわけでは決してないが、それだけでは解決できない。結局は、多様な外交手段を使い、対話や国際協調、多国間の約束などの枠組みの中で、粘り強く解決を探っていくしかないのだ。9条が前文とともに打ち出した平和主義の理念は、21世紀の今日を見通したような底力を持つ。私たちが提言した。「地球貢献国家」もそうした考え方に基づく。武力では対応出来ない脅威にどう立ち向かうか。そこで汗をかくことこそ憲法の理念を生かすことであり、21世紀の日本が果たすべき役割りなのではないか。社説15と、社説16で国連の平和活動、「人間の安全保障」への積極的な参加を提言した。国連PKOにおいて、実力部隊として自衛隊が担う役割りは小さくない。だが、日本の主眼はあくまで非軍事の活動に置き、NGOや民間を含めた幅広いものにしていく。なぜなら、そこに時代の要請があると考えるからだ。軍事力の効用に限界が見えた世界で「国際公益の世話役」となり、地球と人間の現在、未来に貢献していく。そうした日本になるために、9条の理念は新しい力を与えてくれるに違いない。捨て去る理由は全く見当たらない。
'07.5.3.朝日新聞