散歩道<1683>

                      経済気象台(145)観光都市奈良への期待

 奈良は、わが国を代表する古都であるが、国土軸である東海道から離れていることもあって、京都ほど観光客の賑わいはない。しかも昔から「大仏商法」といわれてきたように、日本一の大仏さんに依存して、余り変化の見られない、どちらかいうと観光客をもてなす仕掛けのとぼしい街のように見える。その奈良が2010年に平城遷都1300年を迎える。710年、都を飛鳥から藤原京をへて平城京に移す、わが国の国家体制の原型が出来上がった。いわば日本の原点である。その関連事業がすでに始まっている。奈良市写真美術館で最近、開催された「なぜ?なぜ?奈良の世界遺産〜小学生のしつもんばこ〜」展も遷都1300年記念の一つ。同館は、大和地方を生涯撮り続けた写真家,故入江泰吉氏の作品を展示しているところだが、今回、世界遺産となった寺院、仏像などの不思議について子供たちから質問を公募し、その写真と簡潔な回答を展示した。それを見ていたのだが、歴史がぐっと近づき、大人にも日本史を学べる大変興味深いものであった。しかも、主要寺院の共通入場券もその場で販売されていた。たぶんこうした試みは初めてではないかと思われる。また、観光には「食」も重要な要素だが、ここ数年の間に、値頃な特色ある食堂、レストランが徐々に増えてきている。こうした事業を通じて大仏商法からどれほど脱却できるか、今後が楽しみだ。関西は、歴史、文化遺産の宝庫。神代の時代(伊勢)から、奈良、平安、明治時代(神戸)まで備わった地域である。関西を一周するだけで日本史を短期間で学べる。その発想の元で歴史街道構想が推進されているが、奈良の関連事業を契機に、観光圏としていっそうの弾みがつき、文字通りひかりを観(み)る地域に成長することを期待したい。これこそ関西のパワーであろう。

'07.3.28.朝日新聞