散歩道<1524>

                  経済気象台(128)円の安売りがデフレを招く

 国際的な不均衡は黒字国の通貨が切り上がることで解消に向かう。それが、黒字国日本を除く先進工業国が理解している変動相場制下での常識である。通貨が切り上がると、輸出手取り金は目減りし、輸入コストは下がる。輸出は、差別化された技術やサービスより、国際的に価格競争力のある製品しか採算が合わなくなる。しかし勝ち残った産業は高い賃金を負担できる。その一方で、輸入品は今よりも割安に手に入り、広く国内で使われるようになり、豊かな生活を実感できる。しかし国内生産が代替され、サービス中心の産業構造への転換は避けられない。現状に目を転ずると、国際的な不均衡は解消に向かうどころか、延々と続いている。黒字でありながら、円が切り上げられないように政策運営をしているからだ。輸出をして稼いだドルを円に交換しないので、円を安く維持できる。と同時に、米国の赤字の穴埋めにドルを再輸出している。先月、日銀は利上げ見送りを決定した。それ以来、低金利の円を借り、その円を売って、高い利回りを得られるドルを買って運用する「円キャリートレード」に、世界の投機資金が殺到しているという。世界一低い金利で円が借りられるうちは大きな利ざやを稼ぐことができる。今回の日銀の利上げ見送りは、日本から海外に向けての金の流れを活発にし、円安を一層後押しするとともに。不均衡の解消を先送りした。しかし制度に逆らうことで生じる副作用が、長い潜伏期間を経て発生している。日本はドルを稼いでも、日本国内に円として持ち帰っていない。米国あての請求書を山ほど抱えているようなものだ。その分、輸出代金が未回収となり、国内でおカネがまわらず、円の購買力は弱まり、消費は伸び悩んでいる。すなわち、デフレがすっきりと解消しない根因となっている。

'07.2.3.朝日新聞