散歩道<1490>
私の視点・アジア太平洋・日米中、連携の時代(1) (1)〜(3)続く
冷戦終結10年前、79年世界史の流れを左右する伎路があった。「中」のつく二つの世界(中国と中東)が、対照的な進路をたどり始めたのである。中国では、復活したケ小平が文化大革命後の混乱を収拾するとともに、「改革・開放」すなわち経済面で共産体制を脱し、西側の市場経済のなかでの中国経済の再建を本格化させたのである。10年後にソ連・東欧の共産体制が総崩れとなったとき、中国は崩壊せず「社会主義・市場経済」を続けることが出来た。長期の高成長で、中国は富強を築いたのだ。他方、中東では79年にホメイニ革命が勃発した。それは反米イスラム主義のエネルギーを開放し、宗教原理主義に立つ反体制闘争のうねりが今日に至るまでやんでいない。中国と中東は正反対の道をたどり、違った意味で21世紀の世界秩序の焦点となっている。○○ 89年ベルリンの壁崩壊と冷戦終結後には、2大潮流が生まれた。一つは「地理と歴史」の復活であり、二つはIT(情報技術)革命主導のグロバリゼーション(地球化)である。米ソの二極秩序が崩壊すると、各地域において存在した歴史的な伝統や対抗関係があらわに浮上し、民族紛争が勃発した。イスラム世界だけでなく、米国のような先進国でも宗教への回帰も目立った。自国の文化や伝統に立ち返るアイデンティティー・ポリティクスが流行し、各国は国益と安全保障を守るナショナリスティックな政治に傾いた。それが大衆民主主義と結びつくと、韓国や台湾のように内向きのポピラリズムの政権が登場した。
'07.1.8.朝日新聞・防衛大学校長・五百旗頭 真氏
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