散歩道<1484>
社説・市場の明白・自分の居場所を作ろう(1) (1)〜(2)続く
昨年は市場経済の意味を考えさせられる出来事が多かった。ライブドアと村上ファンド*1の証券取引法違反は、市場競争の弊害を象徴する事件だった。所得格差の拡大も、市場競争がもたらした負の側面として論議を呼んだ。こうした問題を考えるに際に、どんな視点で市場経済を見ればよいのか。18世紀に産業革命がはじまったころ、古典経済学の創始者アダム・スミスは、人々が市場で自由に競争し、分業することで、結果的には社会全体が大きな利益を得ると強調した。個々人の理性や能力は不完全で限られているが、その人々が市場経済のシステムに参加すると、1人ではとても出来ない社会の進歩が成し遂げられる、というのだ。この時代の自由主義は、市場経済システムへの素朴な信頼にささえられていた。だが、同時に、市場経済システムがうまく働く為には、伝統や道徳、慣習の存在が欠かせないとも強調している。市場経済より先に、家族や農村のような共同体があり、その中で伝統や慣習が育まれる。伝統や慣習が市場の暗黙のルールをつくり、経済活動が行なわれる。これが古典的な市場競争のイメージだ。つまり、伝統的な共同体という「居場所」にしっかり根をはった人々による紳士的な競争、というのが古典的自由主義がたたえる市場競争なのだ。
'07.1.6.朝日新聞
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