散歩道<1470>
経済気象台(111)・マイオピア経営
ハーバードビジネススクールでしばしば語られるテーゼに「マイオピア経営(おもいこみ)」というのがある。これは経営者が知らず知らずの内に犯す経営的失敗のパターンの一つであって、その典型的な例が「鉄道」である。米国において鉄道産業は明らかに斜陽であるが、鉄道が斜陽になったのは、経営者によるマイオピア経営の故だというのである。鉄道事業の本質とは何か。それは、モノをトランスポートすることである。鉄道の経営者は、ものをトランスポートするのは、2本のレールの上に汽車を走らすことだけだと思い込んだら、その後にやってくるトランスポーテーションビジネスの隆盛を見逃したのだ。経営における最大のミスの一つが、このような経営者の思い込みによる。経営における、もっとも大きなエクスキューズは「斜陽産業の故に矢つき刀折れた」と言うものである。なるほど、すべてのものには寿命があり、栄枯盛衰がある。人には運不運もあるでしょう。しかし、ひとたび経営を引き受けた以上、泣き言は言うべきでない。特にこの縦割りの社会では、発想は狭くなりやすい。この殻を打ち破ってこそ、新しい展開が可能になろうというものである。鉄道だけではない。かって映画の都ハリウッドは、映像はフイルムの世界だけだと信じていた時代があった。ハリウッドの復活は、この思い込みから脱することから始まった。経営が固定すると、発想が枯れ、視野が狭くなる。国の経綸(けいりん)も同じだ。省あって国なく、戦術あって戦略無き現状を見ると、日本の衰退は案外、早いのではないかと危惧される。これを避ける道は一つ。「発想を外に求める」ことだ。
'05.8.15.朝日新聞
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