散歩道<1394>

                    時を読む・新たな建前は生まれるか(2)          (1)〜(3)続く

  小泉純一郎という人がなかなか老獪(ろうかい)で本音が見えにくかったのに比べて、安倍普三首相には本音しかないように見えることを考えると、本音の現れ方はどうやら思考方法そのものであって、世代間で大きく変ってきていると推測できそうではある。安倍内閣の世代が当り前のように核武装の是非を口にし、それを首相の本音を代弁していると周囲が擁護する。また、総務大臣はNHKに対して放送命令を出すことをためらわないし、経済閣僚たちは企業の要望に応える為の経済施策をためらわない。非核三原則の国是も、財政再建の命題も、彼ら本音世代が相手では顔色もない。

○ ○
 この現代の政治状況は、外交的駆け引きや政策の是非以前に、政治家が本音で語る以外の思考方法をもたなくなったことを意味している。そして国がそうであれば、同じように本音の思考しかもたない社会が生まれてくるのは当然である。企業がかくもおおぴらに利益を社員に還元せず、非正規雇用を増やしつつあるのも、企業人が本音以外の思考を捨てたことによる。学校や教育委員会が、いじめ
*2の有無について明らかなウソをつき続けるのも、組織人の本音以外になにもないことの証明である。政治家や教育者がそうなら、親は親でわが子が金持ちや有名人になって欲しいという本音をかくさないし、子は子で、見事なまでに自分の好きなことだけをしたいとう本音で生き、そのために、社会に認められたいというもう一つの本音の矛盾に落ち込むのだが、本音だけの思考が出口を探すのは難しい。

'06.11.20.朝日新聞・作家・高村 薫さん

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