散歩道<1343>

                        夕陽忘語(2)・核兵器三題             (1)〜(4)続く

 要するに第二撃能力のない核武装の主要な役割は、日米軍事同盟のような強力な軍事力に挑むことではなく、NPTの機能を脅かすことではないだろうか。「北朝鮮の脅威」という話は、核開発のどの段階での、誰にまたは何に対する脅威なのか、はっきりしないかぎり、あまり漠然としているように思われる。イラクへの先制攻撃も早すぎた。「第二撃能力」の問題と関連して、私はNPTの歴史を思い出した。インドとパキスタンは公然たる核武装国となり、北朝鮮は爆発実験を行なった。それぞれの背景には、明らかに、それぞれの特殊な状況がある。しかし共通の要因も働いているいないはずがないだろう。それは条約の根本的な不平等性である。一方には主権国家間の平等を原則とする国際的秩序がある。他方には国連加盟国の一部には核武装を公認し、大多数には圧力をかけても公認しないNPTがある。しかしフランスに核兵器を許し、イタリアには許さないことを正当化する説得的な議論はない。中国が核武装国で、インドがそうでなかった理由も明らかではない。これがNPTの構造的不平等の第一である。

'06.10.25.朝日新聞・評論家・加藤周一様

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