散歩道<1285>

                 安倍政権、東アジア外交の今後(1)・「中韓改善」まず安全運転          (1)〜(4)続く

訪歴の意義  内外に指導力示す:協力の具体的な進展カギ
 安倍首相の中韓訪歴は、息づまっている、日中、日韓の政治関係を正常化し、関係を再構築していくための足がかりを築くことを目的とした会談だったといえる。しかし、訪歴中に行なわれた北朝鮮による核実験は会談の文脈に変化を与え、今後の東アジア国際政治において緊張が高まったことは避けられない情勢となった。今回の訪歴はおそらく、安倍政権の成立以前から、中韓政府と水面下で準備された段取りにそって進められたのであろう。首相就任前の官房長官の時に安倍首相は、今年の4月の春の例大祭直前に靖国神社参拝を済ませたという非公式の情報を流すとともに、自らの参拝については表明しないという方針を示した。おそらく今年はもう靖国に参拝せず、また、この問題で小泉前首相のように中韓と正面から対決する意志のないことを示して中韓に誘い水を向けた。さらに安倍首相は、所信表明演説で中韓重視の姿勢を示し、国会答弁でも95年の「村山談話」の継承を表明するなど、「保守派」という印象からは意外なほど、積極的に歴史問題での柔軟な姿勢を示した。首相にとっては、自らの支持層の不満をある程度覚悟してでも、中韓に首脳会談を働きかける動機が存在した。

'06.10.11.朝日新聞・京都大学教授・中西 寛氏