散歩道<1230>

               思潮21・公と私・人情と事理をはかり政治はバランス保て(2)      (1)〜(4)続く

 どちらかといえば、外交は内政によって決定される、という考えがある。最近では、北朝鮮による日本人拉致やミサイル発射への対応のように、世論を意識しながら外務省や自民党の関係部会を主導する首相官邸の姿勢がこれに近いだろう。事実、小泉首相は外国にとやかく言われることはないとして参拝に踏み切ったのだ。他方、外交が内政のあり方をかなり拘束するという立場もある。8月に「アジア外交のビジョン研究会」を立ち上げた自民党議員の立場はこれに近い。日中韓を軸にした東アジア外交こそ日本の政治経済安定の根拠であり、産業や国民を富ませ国力を増進させる源泉と考えるわけである。小泉首相は、歴代二位の平均50%という高支持率(「朝日新聞」・世論調査)を背景にした政治家らしく、派閥解体や郵政民営化など「自民党をぶっこわす」という一貫性に連なる明快な政治選択として、靖国参拝を有権者の前に示したかったのだろう。首相は参拝を「心の問題」という「私」の次元で捕らえたが、大きな公共性ともいうべき日本国を政治的に代表する首相としては不十分な論理である。公共的意思を実現する政府の長としての意見「公」の文脈で語ることは、国際社会という広い「公」の場で日本の主権を担う代表者としても不可欠だからである。他方、首相は外交が内政を規制するという立場をひそかに守旧派の「抵抗勢力」になぞらえたかったのではないか。それは、国民の印象として、靖国参拝を批判する立場が外国の主張を代弁すると受け止められた点とも無縁ではない。

'06.9.4.朝日新聞・東京大教授・山内 昌之氏