散歩道<1210>
漂流する風景の中で・岩井克人さんと考える(5)・資本主義と会社 (1)〜(5)続く
経営者の倫理性が不可欠
20世紀の最大の教訓の一つは、社会主義は人間の自由を抑圧するということだった。これに対し、資本主義は、格差や不況、環境破壊や拝金主義など、様々な欠陥や矛盾を抱えてはいるが、それを超えるものは当分、生まれないだろう。なぜなら、人間が自由を追求すれば、必然的に資本主義的な活動が生まれてくるからだ。その欠陥ゆえに、資本主義を抑圧することは、そのまま自由を抑圧することになる。好むと好まざるとにかかわらず、我々はこれからも長く資本主義の中で生きていかざるをえない運命にある。この資本主義の矛盾を補完するものが倫理性であることは先に述べた。まさにこの倫理性に支えられた社会こそが「市民社会」と呼べるものなのではないか。倫理の基本は、他の人間を自分の利益の手段としてのみ扱ってはいけないということだ。その大原則の上で初めて、対等な人間がそれぞれ利益を求めてお互いを手段として利用することを認める契約関係が結ばれていく。そうだとすれば、契約関係を中心に展開されてきた従来の市民社会論とは違った形で民社会の新しい姿が描けるのではないか。私はそんな仮説に立った研究に取り組み始めている
'06.7.25.朝日新聞・東大教授・岩井克人氏
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