散歩道<1087>

               ネットで力増す「集団の知恵」考(1)・検索が情報集積と利用に拍車         (1)〜(2)続く

「不特定多数の人々」といえば、「まとまりのない集団」、あるいは「衆愚」という否定的なイメージさえつきまとってきた。しかしその人々にこそ、専門家たちよりも優れた知恵を生み出す力があるという発想・信念が、まさに不特定の圧倒的多数の人々の集合であるインターネットの世界にひろがりつつある。インターネットでの動きや相次いで出版された本から、この「力」への関心と期待をさぐってみた。
高まる期待「相互作用で専門家しのぐ」「ヒラリークリントン」
*1は08年の民主党大統領候補に指名されるか」「鳥インフルエンザ*2は07年3月31日以前に米国で確認されるか」。さまざまな事柄についての人々の予測を、株式のように値付けることで集計する「予測市場」がインターネット上で運営されている。アカデミ-賞の予測などがを専門家ではない人たちが限られた材料で判断するのだが、それらを適切な方法で集約すると、少数の専門家による予測よりも優れた結果となるという「集団の知恵」の例だ。もっと身近なのが、ネット上のフリー百科事典ウィキペディアだろう。誰でも編集に参加でき、新しく項目を作成したり、他人が作った別の項目を修正したり。この相互作用が繰り返されることで、次第に事典としての「正しさ」が高まってゆく。01年に誕生し、項目の追加は急激、英語版は100万、日本語版も22万を超えている。日本の家庭でのインターネット利用を調査する ビデオサーチインタラクティブ によると、利用者も今年1月456万人から5月には661万人と急増している。

 
社会学者・鈴木謙介さんの話。「知を蓄積するモデルを」:日本はテレビビジネスの国、ネットへの移行でアジアに遅れをとっている。ネットよりテレビの方がもうかるのであればマスメディアに発信した方が得だと考えるだろう。ネットには眉唾物(まゆつばもの)の知識ばかりが蓄積されてしまう。「面白いけれど儲からないIT産業」を脱し、知が蓄積されるビジネスモデルを早急に構築する必要がある。


'06.6.27.朝日新聞

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